形成外科クリニックを開業して、あっさり閉院した話 第5回

そのほか雑費編

※今回も例によって、私の独断と偏見が色濃く反映されている。


目次

ここまでの出費をざっくりまとめると…

項目費用
家賃・保証金600万円
医療機器・電子カルテ1,700万円
その他の医療機器(持針器、鑷子、喉頭鏡など)100万円
改装費800万円
AED30万円
スタッフ募集・ホームページ・公民館使用料など50万円
薬代(ボトックス・ヒアルロン酸など)100万円
ミサワホームのコンサルタント代150万円
合計3,530万円

そして、雑費の波が押し寄せる

ここからが本番。いわゆる「その他」に分類される雑費が次々と発生する。

たとえば――

  • 診察ベッド
  • 棚、机、椅子
  • 包交車(処置道具を載せるワゴン)

このあたりはこまごまとしたものがたくさんある

個人的に掃除はわりと好きなほうなので、
「床には物を置かず、掃除しやすい家具を選ぶ」ことをモットーに選定。

この時にはまだロボット掃除機がこなれた値段ではなかったこともあり、毎日、掃除機をかけてからモップがけをするルーティンを作った。
ワンタッチで絞れるモップを導入したが、これが非常に便利。
あれは地味におすすめ。たぶん掃除が30%ぐらい快適になる。(ロボット掃除機だと90%くらい楽になる)

電子カルテのモニターが小さくて目に悪そうだったので、少し大きめのモニターを購入。
患者に写真を見せやすくなったので、これは正解だったと思っている。

そのほか、挙げればキリがない細々とした出費が積もり、雑費だけでざっと150万円ほどかかった。


総額:3,700万円

開業資金として用意していたのは、
自己資金6,000万円+借入金2,000万円=合計8,000万円。

そのうち、開業準備の段階で消えた額が約3,700万円。
つまり、開業時点で手元に残った資金は4,300万円(うち2,000万円は借入)。

ここまではまだ“準備段階”。ここから先が、本当の消耗戦。


固定費が毎月消えていく

運営が始まると、何もしなくても消えていくのが「固定費」。

項目毎月の費用
家賃約60万円
人件費(看護師・受付)約50万円
光熱費約10万円
電子カルテ管理料約4万円
通信費・電話代約1万円
合計約125万円

ここから診療収入が出る前提で話が進むのだが、
「もし思ったように患者が来なかったら?」という冷汗が背中を伝う。というか伝わりっぱなしだった。
実際、患者は一人も来なかったので毎月125万円が自動的に引かれていく。


生活費はどうしていたのか?

開業当初は、クリニックから徒歩5分の1LDKの賃貸アパートで生活していた。

項目毎月の費用
家賃13万円
光熱費・通信費など5万円
食費5〜8万円
合計20〜23万円

クリニックの固定費125万円と合わせると、毎月150万円近くが出ていく計算になる。
さすがにこのペースでは資金が保たない。

そこで途中から生活コストを大幅にカットすることに決めた。
アパートを解約し、クリニックの納戸で寝泊まりする生活へシフト。


8か月間、診療所の納戸暮らし

納戸といっても、広さは3畳程度。
ベッドがなんとか入るサイズ。収納ゼロ、風呂ももちろんない。

風呂はどうしていたかというと、東京ドームのラクーアへ通っていた。
数日に一度、ラクーアに行き、全身を清め、サウナでふらふらになって帰ってくる生活。
サウナ後は真冬に半袖Tシャツ一枚で夜中に一駅歩いて帰るというかなりやばいやつだった

ちなみにラクーアは回数券の割引キャンペーンが定期的にあるので、そのタイミングでまとめ買い。
これでだいぶ生活費を抑えることができた。


医者になってから、まさか納戸で8か月も寝泊まりする日々が待っているとは思わなかった。
ドラえもんかよ

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