~開業までの準備編(資金調達・物件探し・スタッフ採用) ~
⚠ 注意:この記事には、私の独断と偏見が多分に含まれています。
その1:資金調達
何はともあれ、開業には資金が必要である。
起業の本にはよく「資金がなければ借りればいい」と書かれているが、基本的には「自分で調達すべき」だと思う。
開業を考えたときの手持ち資金は約6,000万円。
10年ほどかけてコツコツ貯めたものだ。
それに加えて、みずほ銀行から2,000万円を借入(金利1.2%)。
- なぜ借りたのか?
- なぜみずほ銀行だったのか?
答えはシンプル。
「コンサルタントに勧められたから」。
このコンサルタントはミサワホームの医療コンサルタントなのだが、詳細は後述する。
結果としては、「借りても借りなくてもあまり変わらなかった」という結論に落ち着いた。
その2:物件探し
形成外科クリニックを開業することは決めていたが、「何をメインにするか?」までは決めていなかった。
基本的には美容中心、保険診療は「念のため扱う」くらいの感覚。
- 手術メインか?
- 処置メインか?
- 機械を使った治療メインか?
…によって、クリニックの間取りは変わる。
深く考えずに「手術とレーザーかな」というざっくりした方針で大まかな広さを決定。
物件はすぐに見つかった。
通っていたジムの真下のフロアである。
ジムのトレーナーさんに「下の階、空くみたいですよ」と教えてもらい、不動産屋で即決。
- 場所:丸ノ内線の駅から徒歩3分
- 広さ:40坪
- 家賃:40万円(+管理費18万円)
- 契約金:保証金+前家賃で約600万円
事務所物件は「家賃の10か月分が保証金」と言われることが多いので、少し高めの印象だったが、保証金は退去時に戻ってくるので、あまり気にしなかった。
物件探しはタイミングが重要、どれだけ立地がよくても家賃が安くても空いていなければ借りられない…
その3:改装
借りた物件はスケルトン(内装なし)状態だったため、改装が必要だった。
内装の方針としては、「普通のクリニック」を目指した。
美容クリニックでよくある豪華な内装ではなく、「普通の清潔感のある家レベル」のシンプルなデザイン。
コンサルタントが連れてきた業者に見積もりを依頼。
業者が出してきたのは、設計+施工費2,500万円の見積書(表紙とA4用紙1枚)。
しかも、
「設計費は通常200万円ですが、今回は無料です!」
という謎のサービス付き。
内容を確認すると…
- ドア → どんなドアを使うのかすら書いていない
- 施工費 → 「40坪の区切り工事:2,500万円」
まるで「福袋」のような見積書である。
レントゲン設備も不要なため、特別な鉛遮蔽工事もなし。
ただ40坪を石膏ボードで区切るだけなのに、2,500万円。
「さすがに怪しい」と思い、その「無料の設計図」を持って近所の工務店に相談。
すると、新たに設計図を作成してくれ、施工費は800万円だった。
この工務店はクリニックの設計経験は少なかったが、保健所や役所に何度も確認に行ってくれるという神対応。
内容も明確で安心感があった。
- 部屋のドア:1枚2万円
- 壁のコンセント(4口):500円
- その他、すべての材料と工賃を細かく明記
極めつけは、コンサルタントが連れてきた業者に
「洗濯機の置き場がないんですが?」と尋ねたときの回答。
「玄関に置いたらいいんじゃないですかね…?」
…もう、どちらを選ぶかは決まった。
その4:医療機器の選定
医療機器は何を入れるか悩むところ。
バイポーラ エルマン(約200万円)
手術をするなら止血用のバイポーラは必須。
エルマンの電気メスとバイポーラが一体になったものを購入したが、電気メスは一度も使わなかった。
後から考えれば、他社のバイポーラ単体で十分だった。
結論:不要な機能に余計な費用をかけた(後悔)。
炭酸ガスレーザー J-mec(約200万円)
これは大活躍。
ほくろや脂漏性角化症の除去はもちろん、爪の処置で爪母を焼灼するのにも使えた。
結論:4番打者としてしっかり働いた。
Qスイッチルビーレーザー J-mec(約650万円)
ほぼ活躍せず。
シミ取りに使った程度で、太田母斑治療を想定していたが、患者が来なかった。
結論:高額な置物になった。
IPL(光治療)エリプスフレックス ガデリウスメディカル(約450万円)
これも大活躍。
たぶん元は取れた。
通常650万円するものがなぜか安くなっていたので購入。
後で理由が判明した。
2年後、エリプスフレックスの後継機ノーリスの権利がガデリウスからキャンデラへ移行。
結果、エリプスフレックスのメンテナンスやヘッドランプの交換が不可に。
M22ほどではないが、パラメータを調整できる点は優秀だった。
結論:最後はメンテ不能になったが、十分活躍した。
電子カルテ BML(約200万円)
迷った末にBMLのクオリスを導入。
電子カルテとレセプトを別々にするか一緒にするか、据え置き型かクラウド型かで選択肢が多すぎた。
BMLにしたのは、知り合いと父が使っていて「いい」と言われたから。
結果としては微妙。
初期費用がかからないクラウド型のほうが良かったかもしれない。
導入して初めて気づいたのだが、BMLのカルテはログイン時にサーバー認証が必要。
つまり、患者データがSSD内にあるのに、ネット認証がないと開けない仕様。
通信が切れるとデータが見れなくなるため、クラウド型と何が違うのかわからない。
この問題は廃業後も続く。
カルテの保管義務は5年間。
しかし、閉院後もネット契約を維持し、月4万円の管理費を払い続けなければカルテにアクセスできない。
カルテ開示を求められた場合、どうするのかBMLに聞いたところ、
「すべて紙に印刷して保管しては?」
…400人分を紙で?
どれだけの紙と保管場所が必要なんだ?
BMLのカルテは周辺機器が壊れたときに、BML推奨のものしか使えない(ドライバなどいれても認識しない)ので注意
結論:初期費用がかからないクラウドのほうがお勧め
その5:スタッフ採用
開業当初は深夜のコンビニのようにワンオペつまり「すべて1人でやる」つもりだった。
しかし、コンサルタントや周囲の反応は…
「そんなクリニック、聞いたことない」
さすがに説得され、看護師と受付を雇うことに。
面接は市役所の会議室(3時間5,000円)を借りて実施。
定員20人の会議室を用意したが、応募は3人。
…この規模の部屋、必要だったか?
こうして、看護師1名、受付1名の体制でクリニックをスタートすることになった。
この2人は超優秀だった。早々に閉院して申し訳ない気持ちしかない
…いかんせん、私がポンコツでした。