~ ① 始まり編 – 独立の理由 ~
⚠ 注意: この記事には、私の独断と偏見が多分に含まれています。
美容医療に惹かれた理由
医者になって20年以上が経つ。
美容外科に興味を持ったのは、医学部時代からずっとだった。
理由は単純。
- 「お金になりそうだから」
- 「80年代後半〜90年代のサブカル的な美容医療に惹かれたから」
…まぁ、そんな感じの動機だった。
ところが研修医時代、大塚美容外科の面接に行った際、
「形成外科の専門医を取ってから来てくださいね」
と言われる。
今になって思えば、これはただの体のいいお断りだった可能性もある。
だが、当時の私は素直だったので、それを真に受け、
- 大学病院・市中病院で修行
- 形成外科専門医を取得
その間も、美容医療のバイトを続け、「いつか美容外科をやろう」 と考えていた。
美容医療のキャリア
勤務先は、全国に5院前後の分院を持つ中堅クラスの美容外科(2院)と美容皮膚科(2院)。
「4つも違うクリニックに勤めたなら、さぞかし幅広い経験を積めたのでは?」
と思うかもしれないが、実際には施術内容はかなり偏っていた。
- 美容外科 → 脂肪吸引がメイン
- 美容皮膚科 → 脱毛がメイン
「何でもやるオールラウンド型クリニック」ではなく、
「特定の施術に特化した環境」だった。
なぜ独立しようと思ったのか?
正直に言うと、
「なんとなく独立してしまった」
…というのが本音である。
ただ、一応理由をつけるなら、2つある。
① 「独立して稼ごう」と思ったわけではない
「美容医療は儲かる!」というイメージがあるかもしれないが、
個人的にはそうでもなかった。
当時の給与は以下の通り。
- 美容外科:月200万円前後
- 美容皮膚科:月150万円前後
- 市中病院の形成外科:月280万円(当直費込み、月15日程度)
美容医療が特別に高収入というわけではなく、むしろ市中病院のほうが条件は良かった。
当直は「お金が欲しいから希望でやっていた」 ので、月の時間外労働は280時間程度だった。
ちなみに4日くらい寝ないと感覚が鋭敏になり、空気をつかめる感じになるになっていた。
それでも、給与に不満はなかった。
むしろ、毎月増えていく貯金額を見るのが楽しくて仕事をしていた。
なのに、なぜ独立を考えたのか?
「40歳を過ぎて、自分の居場所が欲しくなった」というのが最大の理由だった。
② 美容医療における「若さ」の影響
大手の美容クリニックもそうだが、
中堅クラスのクリニックにも毎年優秀な新人医師が入ってくる。
保険診療の世界では、
「なんかこの症状、ちょっとヤバいな…」
みたいな経験則がものを言うことも多い。
だが、美容医療では若さと患者との「共感力」が非常に重要。
特に美容外科の患者層は圧倒的に20代の女性。
40代のおっさんが、20代の女性と「共感」できることは…
まぁ、たぶんなにもない。
賛否あるだろうけど… 共感できてると思っている人は相手が合わせてくれていることに気が付いたほうがいい。
むしろ、新人の先生のほうがカウンセリングがスムーズだったり、患者の満足度が明らかに高いことが増えてきた。
気づけば、自分の居場所が少しずつ狭くなっていた。
そこで、「それなら、自分の場所を作るしかない」と考え、独立を決意した。
美容医療の限界を感じた
もう一つ、独立を考えた理由がある。
独立が金ではないことと矛盾してしまうかもしれないが
「美容医療の単価が下がり、どのクリニックの収益も悪化しつつあった」
例えば、2005年頃にバイト先で扱っていた脇の脱毛は、
5回で10万~15万円。
それが2025年には…
最安で1回500円。
もちろん、実際には500円では施術できない。
(カウンセラーと称するスタッフが、他の部位も勧めてくるシステムになっている。)
とはいえ、個人クリニックでも1回3,000~5,000円が相場になっている。
さらに、
- 二重手術
- 脂肪吸引
などの単価も以前より下がり、「美容医療だけでやっていくのは厳しいかも…」と感じ始めていた。
そんなとき、ふと思った。
「せっかく形成外科専門医を取ったのだから、美容だけでなく有効活用しよう」
こうして、
形成外科をメインとしたクリニックを開業することに決めた。