閉院編
※言うまでもなく、独断と偏見でお送りしています。
閉院を決めると、むしろ気が楽になった
受付と看護師に閉院の決断を伝えたあと、不思議と気持ちが軽くなった。
やれることはやった、という妙な清々しさもあったのかもしれない。
不動産契約には“6か月前通告”という縛りがある。
そこで以下のスケジュールで閉院を進めることに。
- あと3か月診療を継続
- 1か月かけて片付け
- 2か月かけてスケルトン工事
こうして、開業から15か月目で閉院することが決まった。
年末に閉院の告知を出し、1月いっぱいで診療を終了することに。
なぜか患者数と売上が急増する
閉院を決めたその瞬間、まさかの展開がやってきた。
患者数が急増し、売上もぐいぐい伸び始める。
月数 | 患者数(延べ) | 売上 |
---|---|---|
13か月目 | 150人(予約の限界) | 190万円 |
14か月目 | 150人 | 220万円 |
15か月目 | 180人(予約の限界突破) | 250万円 |
まるで“閉店セール”効果。
予約は告知を出した時点で埋まり、以降ずっと満席。
あの「閉店セール〇〇%オフ!」を何年も続ける店がある理由が、少し分かった気がする。
最後の患者とGoogleの口コミ
ラストの患者が、Googleに良い口コミを残してくれていた。
「閉院前に行けてよかった」と。
ちょっと嬉しくなった。ありがとう。
継続も一瞬よぎったが……
患者が増え、売上も黒字。
「このまま続ければいいのでは?」という考えが一瞬だけ頭をよぎる。
でも、一度「閉院する」と宣言した以上、今さら撤回するのはよろしくない。
何より、受付や看護師の予定もある。
結局、予定通り閉院することを選んだ。
苦渋の決断ではなく、静かな着地。
まさかの時流に乗る
そして閉院から1か月後――2020年2月。
コロナウイルスが国内でも本格的に広まり始める。
4月には緊急事態宣言が出され、クリニックの営業継続どころではなくなる。
美容医療は特に打撃を受け、各所で営業停止や来院激減のニュースが流れるように。
そのとき、自宅でテレビを見ながら思ったのは、
「あのとき閉院しておいて本当によかった……!」という心の叫び。
なにこの奇跡的なタイミング。もはや神の采配。
閉院にまつわるゴタゴタ
撤退は決めたが、現実問題としてスケルトン工事が必要。
しかもこの工事、とにかく金がかかる。
「次の入居者が見つかれば、内装付きで引き渡せるのでは?」
という淡い期待を込めてテナント募集もしてみたが、3か月では見つからず。
結局――
- みずほ銀行に借入金を返済
- 設置物をすべて撤去
この時点で、手元に残ったのは約100万円。
現実は地味に厳しい。
スケルトン工事費に唖然
最大の衝撃が、工事費の請求額。
管理会社から提示されたスケルトン工事費は――
650万円。
保証金と相殺されたので追加支払いはなかったが、
「800万円かけて作った内装を、650万円かけて壊す」という虚無。
あまりにも理不尽なので交渉したところ、600万円に値引きしてもらえた。
だが、モヤモヤは最後まで残った。
まさに「作って壊して赤字になる建築シミュレーション」。
まとめ:こうして15か月の挑戦は終わった
- 閉院決定と同時に患者が急増(まさかの“閉店セール効果”)
- 黒字化したものの、初志を貫き予定通り閉院
- 結果的にコロナ直前に撤退できたのは幸運だった
- 最後のスケルトン工事費600万に強烈なモヤりが残る