形成外科クリニックを開業して、あっさり閉院した話 第8回

閉院編

※言うまでもなく、独断と偏見でお送りしています。


目次

閉院を決めると、むしろ気が楽になった

受付と看護師に閉院の決断を伝えたあと、不思議と気持ちが軽くなった。
やれることはやった、という妙な清々しさもあったのかもしれない。

不動産契約には“6か月前通告”という縛りがある。
そこで以下のスケジュールで閉院を進めることに。

  • あと3か月診療を継続
  • 1か月かけて片付け
  • 2か月かけてスケルトン工事

こうして、開業から15か月目で閉院することが決まった。
年末に閉院の告知を出し、1月いっぱいで診療を終了することに。


なぜか患者数と売上が急増する

閉院を決めたその瞬間、まさかの展開がやってきた。

患者数が急増し、売上もぐいぐい伸び始める。

月数患者数(延べ)売上
13か月目150人(予約の限界)190万円
14か月目150人220万円
15か月目180人(予約の限界突破)250万円

まるで“閉店セール”効果。
予約は告知を出した時点で埋まり、以降ずっと満席。
あの「閉店セール〇〇%オフ!」を何年も続ける店がある理由が、少し分かった気がする。


最後の患者とGoogleの口コミ

ラストの患者が、Googleに良い口コミを残してくれていた。
「閉院前に行けてよかった」と。

ちょっと嬉しくなった。ありがとう


継続も一瞬よぎったが……

患者が増え、売上も黒字。
「このまま続ければいいのでは?」という考えが一瞬だけ頭をよぎる。

でも、一度「閉院する」と宣言した以上、今さら撤回するのはよろしくない。
何より、受付や看護師の予定もある。

結局、予定通り閉院することを選んだ
苦渋の決断ではなく、静かな着地。


まさかの時流に乗る

そして閉院から1か月後――2020年2月。
コロナウイルスが国内でも本格的に広まり始める。

4月には緊急事態宣言が出され、クリニックの営業継続どころではなくなる。
美容医療は特に打撃を受け、各所で営業停止や来院激減のニュースが流れるように。

そのとき、自宅でテレビを見ながら思ったのは、
あのとき閉院しておいて本当によかった……!」という心の叫び。
なにこの奇跡的なタイミング。もはや神の采配。


閉院にまつわるゴタゴタ

撤退は決めたが、現実問題としてスケルトン工事が必要。
しかもこの工事、とにかく金がかかる

「次の入居者が見つかれば、内装付きで引き渡せるのでは?」
という淡い期待を込めてテナント募集もしてみたが、3か月では見つからず。

結局――

  • みずほ銀行に借入金を返済
  • 設置物をすべて撤去

この時点で、手元に残ったのは約100万円
現実は地味に厳しい。


スケルトン工事費に唖然

最大の衝撃が、工事費の請求額。

管理会社から提示されたスケルトン工事費は――
650万円

保証金と相殺されたので追加支払いはなかったが、
「800万円かけて作った内装を、650万円かけて壊す」という虚無。

あまりにも理不尽なので交渉したところ、600万円に値引きしてもらえた。
だが、モヤモヤは最後まで残った。
まさに「作って壊して赤字になる建築シミュレーション」。


まとめ:こうして15か月の挑戦は終わった

  • 閉院決定と同時に患者が急増(まさかの“閉店セール効果”)
  • 黒字化したものの、初志を貫き予定通り閉院
  • 結果的にコロナ直前に撤退できたのは幸運だった
  • 最後のスケルトン工事費600万に強烈なモヤりが残る
目次