形成外科クリニックを開業して、あっさり閉院した話 第6回

開業後から半年編

※今回も当然ながら、私の独断と偏見に満ちている。


目次

開業準備は万全だった……はず

開業1週間前から、BMLによる電子カルテの講習がスタート。
受付スタッフも看護師も覚えが早く、3日ほどで操作をマスター。

診療のシミュレーションも何度か行い、大きな問題も見つからなかった。
「これなら大丈夫そうだ」と、内心ほくそ笑む。
準備は完了、開業への自信もそこそこあった。


そして、開業当日

日付来院患者数
開業初日0人
翌日0人
翌々日0人

まぁ、最初はこんなもんだろう。焦ることはない。


1週間後

患者数:0人。

うん、まぁ、最初は時間がかかるものだ。
父も昔「開業1か月目で患者3人だった」と言っていたし、
この程度は想定内……のはずだった。

しかし。


想像を超えた無風状態

月数来院患者数
1か月後0人
2か月後0人
3か月後0人
4か月後0人

9月に開業し、年末までの来院者数――ゼロ。

これは、さすがに心が折れかけた。

受付スタッフも看護師も、
「先生……本当に大丈夫なんですか?」という表情になってくる。

いや、大丈夫なわけないじゃん(笑)


待望の“一人目”

年が明け、節分も近づいたある日、ついにその時が来る。

「先生、患者さんが来ました!」

開業以来、初の来院者。診察内容は“爪の処置”。

  • 肥厚した爪をグラインダーで削り
  • 適切な長さに整える

待ちに待った患者だったので、処置時間はたっぷり45分。
「こんなに丁寧に爪を切ってもらったのは初めてです!」と言われ、ちょっと嬉しくなる。
でも爪の処置って基本的に手術とかでないと保険点数とれないのよね・・・

収入:初診料のみ、2,800円。(うち3割はその場で、7割は2か月後に振り込まれる)


開業から6か月の総収入:2,800円

一方、毎月の固定費は容赦なく発生する。

項目毎月の金額
家賃約60万円
人件費(看護師・受付)約50万円
光熱費約10万円
電子カルテ管理料約4万円
通信費・電話代約1万円
合計約125万円

6か月間でかかった支出:125万円 × 6か月 = 750万円


資金残高の減少

項目残高
開業時点4,300万円(※うち2,000万円は借入)
6か月後3,550万円(=4,300万円 − 750万円)

なお、この数字には自分の生活費は含まれていない。
実際の残高はもっと少なかったはず。

「このペースだと、1年以内に自己資金が尽きる…」
焦燥感が現実味を帯びてくる。


バイトを始めることにした

生き残るためには、どこかで現金を補充する必要がある。
というわけで、週2日のバイトを始めることに。

  • 時給:1万円
  • 月64万円(週2日 × 8時間 × 4週)

これで当面の資金繰りは何とかなる。
その代わり、“休みゼロの生活”に突入。


というか、バイト生活の方が豊かでは?

バイト中、ふと気づく。

「患者が来ようが来まいが、給料もらえるって……楽だな」

開業医としての自分が徐々に透明になっていくのを感じながら、時給1万円のバイトに癒やされていく日々が始まった。

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